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自然哲学者2

唯物論者の始まりである最後の自然哲学者、デモクリトス(BC460~370)など。
原子(アトム)という言葉もここから来ています。
~~~~


前回のパルメニデスの普遍の存在と、ヘラクレイトスの変化生成の考えは、よく対比されます。

パルメニデスは、
A.何も変化することは出来ない。
B.したがって感覚はあてにならない。

ヘラクレイトスは、
A.すべては変化する(万物は流転する)。
B.感覚はあてになる。

原子モデル


この対立に答えたのが、エンペドクレス(BC494~434)です。

エンペドクレスは、この不一致が生じた原因は、二人の哲学者が、元素はたった一つだと考えたことによって生じたのだと言います。

元素が1つしかなければ、理性が語ることと、感覚を信じることの間に溝を作るしかないのだといいます。

水は魚や蝶にはならない、水は水のままであるわけで、パルメニデスが何も変化しないと言ったのは正しい。

しかし、ヘラクレイトスが言うように、絶え間なく自然は変化しているのであって、それを見る感覚が語りかけることは、信じるべきであるとします。

それには、自然はたった一つの元素から出来ている、という考えを捨てるべきだと言います。

結局、エンペドクレスは、自然には四つの元素があると信じ、これを「根」と名付けます。
その四つの根とは、土、空気、火、水です。

自然のあらゆる変化は、この四つの元素が、混ざり合ったり、分離したりすることで生じるのだと言います。

そしてたとえば、動物が死んだとすると、四つの物質はバラバラになります。

四つの元素は、それ自体は変化しませんが、それらが様々な割合で混ざり合うことによって、また様々なものが、新しく作られていくのだと考えるのです。

木片を燃やすと、火の中で、何かがパチパチとはぜ、ジージー言う音も聞こえます。
この音は水によるものです。そして何かが煙になり、空気となる。
そして炎が消えた時に残るのは灰、すなわち土である。

エンペドクレスは、それに加えて、物質が結合したり、分離したりすることの原因についても語ります。

四種類の根を結合するのものを「愛着(ピリア)」、分離させるものを「憎しみ(ネイコス)」と名付けます。

つまりエンペドクレスは、物質(四元素)と力(愛と憎)を分けて考えたのです。

私たちの知覚についても、おもしろい考え方をします。

私たちの目の中の土の部分が、自然の土をとらえ、目の中の空気の部分が、外界の空気をとらえるのだというのです。
そして、これらの元素の欠けているものがあると、自然を全体としてもとらえることが出来ないといいます。

考える犬1


しかし、一つの元素とか、四元素から全てが作られるという点に納得しなかったのが、アナクサゴラス(BC500~428)です。

アナクサゴラスは、自然のものを小さなものに分解すると、目に見えないものになるが、この小さな要素の一つ一つにも、全ての要素の元になるものが含まれているはずだと考えたのです。

これは、現在の科学で、私たちの身体が、細胞から出来ていて、体細胞の一つ一つには、身体全体に関する、おびただしい情報が書き込まれている、という考えにも通じるものです。

アナクサゴラスは、最も小さな構成要素のことを、「種子(スペルマタ)」と呼びます。
エンペドクレスは物質の結びつきや分離について、愛と憎の力を考えました。

これに対して、アナクサゴラスは、バラバラに混ざり合っていた「種子(スペルマタ)」は「理性(ヌース)」の働きによって、次第に分別整理され、現在のような秩序ある世界ができあがったのだ考えました。


そして、最後の自然哲学者、デモクリトス(BC460~370)が登場します。

デモクリトスは、すべてのものは、目に見えないほどの小さな単位から、成り立っていて、その一つ一つは、永遠に変わらないものと考えました。

そしてその一番小さな単位を、「原子(アトム)」と名付けます。

原子モデル2


アトムとは、それ以上「分割できない」という意味です。

原子はそれ以上は分けられず、永遠に存在する、だから、どんなものも原子から出来ているのであって、無から生じることはないのだというわけです。

そして、原子は、全てが同じ形ではないだろうと、予測します。

同じものから、全てのものが、かたち作られるというのは、うまく説明が付かないというのです。

自然界には、無限の原子が存在し、それぞれが様々な形をしているので、それらが組み合わさって、あらゆるものを形作ると考えました。

そして、原子はどんなものであれ、それ以上分けられないし、永遠の存在で、変化することもないのだという考え方です。

現在の物理学でも、原子が終わりではないにしても、それ以上分割できない限界が存在するという点では、同じように考えています。

デモクリトスは、現在のような測定機器なしに、思考だけで、この考え方に達したわけです。

また、デモクリトスは、原子のみが物質(マテリアル)として存在し、原子のないところは、ただの空間だと考えています。

そして、物質(マテリアル)以外の力や精神的なものを、一切排除して考えました。
このことから、かれは、「唯物論者(マテリアリスト)」と呼ばれます。

原子論では、原子が空っぽの空間を、運動することによって、様々な生成や消滅も説明できるとします。
なお空っぽの空間、虚空間(ケノン)という考えもここで登場します。

そして、また彼は、魂というのは、魂専用の「魂の原子」が集まって出来ていると考えます。
人間が死ぬと、魂の原子はバラバラになって、四方八方に飛び散り、新しく作られようとする魂の中に、飛び込んでいくと考えたのです。

考える若者


デモクリトスの原子論によって、いったん自然哲学は区切りを迎えます。

しかし、デモクリトスは、全ては機械のように動いていき、エンペドクレスやアナクサゴラスのような、精神の力というのはまるで認めなかったのです。

原子論は、現代の科学としても充分に通じるものであり、そしてまた、否定された精神の働きについては、現代でも明確な答えは已然としてもたらされてはいないようです。

物質の根源が何かはともかくとして、自然哲学者たちは、自然の現象、営みの原理を突き止めたいと考えていました。

それに対して、現代の私たちは、人工の物に囲まれて、概念ばかり操作しているようにも思えます。

目の前の利益にとらわれたり、競争すること自体が目的になってしまっています。

哲学以前に、何が大事なものかを、もう一度考え直す時が来ているのかも知れません。

参考
ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙
ヨースタイン ゴルデル 日本放送出版協会 (1995/06)
※哲学者の年代はソフィーの世界の記述にしたがっています。



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自然哲学者1

以前連載した哲学史から。。。

いつもと趣向をかえて、哲学史を振り返ってみたいと思います。

哲学というのが、現在の私たちと無縁の世界ではなく、
私たちの今の常識を、作り出してきた元になっていることに、
きっと驚きや、新しい発見があると思います。

ギリシアの遺跡


今回は、最初のギリシャの哲学者たちについてです。

ソクラテス以前の、彼らのことは、自然哲学者と呼ばれたりします。
これは、彼らの関心の対象が、自然の営みにあったことによります。

ギリシャの人達は、全てのものが無から生まれたとは考えず、元になる「何か」がすでに存在していると考えていました。

全てのものの、おおもとになる、なにか「元素」が、存在するのだと考えていました。

そして、かれらが哲学者と呼ばれるのは、自然の出来事を、それまでの神様の仕業(神話)によるものではなく、自然そのものを観察することにより、その原理を解き明かそうとして、神話から自由になった点にあります。

最初に元素の考え方ということで、ミレトスの三哲学者、タレス(BC624?546)、アナクシマンドロス(BC610?547)、アナクシメネス(BC570?525)についてさらっと触れます。

タレスは、エジプトにいって、ピラミッドの高さを、影の長さから測定したと言われています。
また天文学にも通じており、日食を予測したと言われます。

タレスは、水がすべての根源(アルケー)だと考えました。

すべてのものは、水から生まれて、水に帰ると考えました。

アナクシマンドロスは、特定の元素からものが生まれるのではなく、何かから生まれて、何かへと消えていくと考えます。

彼は万物の根源(アルケー)は無際限無限定(アペイロン)であると考えています。

アペイロンは成熟することも衰退することもなく、目の前に存在する物質を、新しく永遠に生み出し続けていると考えました。
アナクシメネスは、万物の根源(アルケー)は空気(気息)であると考えました。

死人が呼吸しないことから、呼吸が生命を作りだし、同じように空気が全てのものを作り出すと考えます。

空気が薄くなると熱くなって火になり、濃くなると冷たくなって水になり、さらに濃くなると土や石になるという具合に考えたようです。

考える博士


次に、元素はともかくとして、どうして、あるものが他のものになるかという、変化のとらえ方に関して、二人の哲学者を取り上げます。

最初に、「エレア学派」のパルメニデス(BC540?480)です。

感覚で捉えると、見た目には物事は生成変化を続ける様に見えます。

しかし「変化」とは在るものが無いものになることであり、無いものが在るものになることです。
理性で考えれば「無」から「有」が生じたり、「有」が「無」になるのは矛盾している、だから変化などないのだと考えます。

このように、パルメニデスは感覚よりも理性を信じることにより、真に在るものは不変だと考えました。

変化するというのは、感覚が騙されているのだと考えます。

このような感覚より理性を信じる考えを「合理主義」と呼びますが、パルメニデスは合理主義の祖であると言われています。

ちなみに、パルメニデスの弟子のゼノンは、運動が存在しないことを示すために、有名な「アキレスの亀」のパラドックスを考えたと言われています。

ガンジス川

変化については、もう一人の哲学者、ヘラクレイトス(BC540?480)がいます。
ヘラクレイトスは「万物は流転している」と考えます。
自然界は絶えず変化していて、変化することが自然の性格だと考えます。

すべては、動きの中にあり、何一つ永遠に続くものはない、「同じ河に二度入ることはできない」のです。この意味は、私たちが、二度目に河に入った時には、私自身も流れもすでに変わっているのだからということです。

また、ヘラクレイトスは、世界は対立で成り立っている、病気にならなければ、健康が何かわからない、冬が来なければ、春の訪れもないというように。

善も悪も、全体の中に必要な居場所を持っていて、対立による闘争があるから、世界が変化を続けていられるという発想をします。

そしてまた、ヘラクレイトスは、理性(ロゴス)という言葉を使います。
世界の全ての現象をコントロールする、「世界の理性(ロゴス)」というものが存在していルはずだと考えます。

人間もこれに従うべきなのだが、たいていの人は自己流の理性(ロゴス)で生きている、そのようなものの見方は、ヘラクレイトスに言わせると「子どもの遊び」だということになります。

「万物は一である」、「一から万物が生まれる」として、「根源的な一と多くの表面的なもの」の関連を言い出した人だとも言われます。

考えるウサギ

「万物は流転する」「対立が変化を作り出す」「感覚はあてにならない」「ロゴス」「万物は一つ」といった考え方が生まれてきました。


しかし、まだ人間の自我や思考については、あまり考慮されなかったようです。
また、神様の仕業といった発想からは、いったん決別します。


今でこそ、私たちは、教育によって物質が原子から出来ていることを、当たり前のように信じています。

しかし、そのような前提がなかったら、ものがなにから出来上がっているか、という問題にどれだけの発想が及ぶでしょう。

また、万物を生み出す根源という考えは、今後も形を変えて、考え続けられることかも知れません。

参考
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アリストテレス

アリストテレス(BC384?322)は、プラトンが61歳の時、プラトンの哲学学校アカデメイアに入ります。

父親は、高名な医者であり、自然科学者でした。
アリストテレス自身も、これを受け継いで、自然に対して関心を向け、そちらの方向から哲学、科学を発展させていくことになります。

アリストテレスは、まず師であるプラトンの考え方であるイデア論を、あっさり否定し、180度違った考えを展開します。

プラトンが、理性に重きを置いたのに対して、アリストテレスは感覚を重視したとも言えます。

また、アリストテレスは、物事を観察することで、性質や特徴を見出しては整理し、知識をきちんと体系化していくという、現代科学の基礎になる方法を築いた人でもありました。

まず、プラトンのイデア論の否定と、かわりになるアリストテレスの考え方から、見ていきましょう。

プラトンは、感覚界を超えた完全なイデア界を見いだし、イデアが自然界の現象よりも真実であると考えました。

そこに馬という動物がいる時、まずイデア界に馬のイデアが存在し、それの影絵のような存在として、感覚界において実際に私たちが見ている、すべての馬が存在できるのだと考えます。

馬1


しかしアリストテレスは、プラトンの考えは、本末転倒であると考えました。

馬のイデアというのは、私たち人間が、実際の多くの馬を見ていく中で、その共通性を見て作り上げた概念に過ぎない。
だから、そのような経験に先立つ、馬のイデアとか型が先に存在する訳ではない、というのです。

生まれてから一度も馬を見たことのない人が、急に馬の実物を見せられても、それが馬だとか、何であるかは解るわけがありません。

見たことのない、変な動物がいると思うだけです。

その後で、何度も馬を見たり、馬についての情報を蓄積していく中で、これが馬というものなんだとわかっていくのが自然です。

プラトンの言うような、馬のイデアがまずあるのだったら、時間をかけなくても、最初に馬を見た時に「馬」というイメージが浮かび上がってきたっていいはずです。

野菜ギャング


そこで、アリストテレスは、動物や植物を観察して、どんな特徴があり、どんな性質を持っているかをこと細かく記録して、分類していくことを始めます。

この種類の動物と、あの種類の動物は、こういう共通の性質を持っているから、これらを○○という分類名をつけようという具合に、知識の体系化をはじめたのです。

アリストテレスにとっては、型というのは、自然の外にあるものではなく、そのものの特有の性質なのだから、そのもの自体の中にあるということになります。

プラトンの、理性で考えたことが最高の現実という考えから、180度逆転して、アリストテレスは、最高の現実は知覚でとらえたこと、感じ取ったことにあると考えたのです。
そしてまた、方法論としては、「物事を観察して、記録を積み重ね、共通の性質や特徴を見つけ出して整理することで、知識を体系化していく」という、現代の科学の基礎を作り出した人でもありました。

雨とカエル


ところで、アリストテレスは、物事の原因について、現代では受け入れられなくなっていますが、「目的因」というおもしろい考えを持っていました。

たとえば、雨はなぜ降るのか。
雨が降るのは、水蒸気が雲になって冷やされて、それが水滴となって重力で地上に落ちてくるのだ。

ここで、アリストテレスは、原因というものを次のように考えます。

・気温が下がった時に、水蒸気(雲)がちょうどそこにあった「質料因」、つまり素材がそこにあったという原因。

・蒸気が冷やされた「作用因」、作用が及んだという原因。
・地上に降り注ぐことが水の形相、つまり本性である「形相因」
そしてもう一つ、
・雨が降るのは、植物や動物が成長するのに雨水が必要だから「目的因」。

今の考え方からすれば、雨によってもたらされた水が、植物や動物が成長するのに必要な条件である、というふうに考えます。

しかしアリストテレスの目的因とは、水があるから植物が成長できると考えるのです。

自然は全て目的にかなっているのであって、雨が降るのは、植物が成長できるという目的のために必要な原因である、という考えなのです。

このあたりは、「全ては偶然に起こって、その環境に適した生物がたまたまうまく成長できるのだ」と考えるか、あるいは「何かそこには目的とか、必然があって、ものごとが起きるのだ」と考えるかの違いのようなものですね。

ところで、アリストテレスの業績のもう一つは、「論理学」です。
「論理」というものを、学問にまで高めたという点です。

有名な三段論法というのも、アリストテレスが考えたものです。

大前提:すべての人間は死すべきものである。
小前提:ソクラテスは人間である。
結 論:ゆえにソクラテスは死すべきものである。

学者風トラ


ところで、アリストテレスは、アレキサンダー大王の家庭教師でもありました。

当時の世界を征服したアレキサンダー大王ですから、とんでもない支配者であったわけですが、アリストテレスはその人物の先生だったわけですから、当時の彼の名声はものすごいものであっただろうと想像されます。

そして、アリストテレスは「万学の祖」とも呼ばれるほど、その知識体系はあらゆることを網羅しており、当時としては完成度も高かったわけですから、後生への影響も多大なものがありました。

しかし、一方で、アリストテレスの諸説は、誤謬までもが無批判に支持されることになるという弊害もありました。

たとえば、現在も基本的に支持されている、デモクリトスの「原子論」にたいしては、「4元素論」を主張しました。

「脳は血液を冷やす機関」といった考え方も、長らく信じられてきました。

彼は「宇宙は地球を中心に廻っている」と考えたので、後の世でガリレイの地動説は、生涯にわたってアリストテレス学派と対立し、裁判にまで発展します。


さて最後に、アリストテレスは、結局弟子を育てることができなかったようです。
このため、ギリシア哲学の黄金時代を築いた3人の哲学者でしたが、
ソクラテス→プラトン→アリストテレス
という師弟関係は、アリストテレスで途絶えてしまいます。

アリストテレスは、ギリシア哲学で最後の哲学者になってしまいました。
そして、このあとの西洋哲学は、短くない混迷の時代を迎えることとなります。

参考
ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙
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プラトン

自然哲学者のひとり、アナクサゴラスは、自然のものを小さなものに分解すると、目に見えないものになるが、この小さな要素の一つ一つにも、全ての要素の元になるものが含まれているはずだと考えました。

これは、現在の科学で、私たちの身体が、細胞から出来ていて、体細胞の一つ一つには、身体全体に関する、おびただしい情報が書き込まれている、という考えにも通じるものです。

また現代では、ホログラフィーの原理を使えば、どの部分をとっても、全体の立体象を映し出すことが出来るといった技術もあります。

パルテノン神殿

しかし、このような部分に全体が含まれるのとは、全く違った方向で、現実の世界と理想の世界を思い描いたのが、ソクラテスの弟子である、プラトン(BC427?347)でした。

プラトンは、現実の世界は、常に変化していて、基準になる考えは、時代や社会のよって「流れ去る」ものでしかないというソフィストの考えや、いや不変の基準というものは存在するというソクラテスの考えの両方に関心を持ちます。

そこから、なんとか「本当の世界」をとらえようとします。

プラトンは、感覚世界では、全ては時間と共に、浸食され「流れ去る」ものしか見えないが、それと同時に時間を超えた、永遠で不変な型が存在するはずだと考えました。

感覚の世界では、たとえば馬という動物がいますが、馬は個体差はあるものの、必ず馬として代々生まれて、受け継がれていきます。

                   馬1


ソフィストたちの、元になるものが組み合わさって、様々なものに変化するという考えでは、どうして馬は、いつでも馬という形で生まれて、また存在し続けるのか、といった問題を完全に説明できているとは言い難いのです。

そこで、元になる原子のようなものだけではなく、それを形作るための、元になる型のようなものが、何かあるはずだと考えたのです。

永遠で不変な型とは、物質的なものではなく、精神的というか抽象的なひな型であり、私たちの身の回りにあるものの上か後ろには、限られた数の型が存在すると考えます。

プラトンは、この感覚的に見えるものの背景にある型を「イデア」と名付けました。

そして、自然で出会うさまざまな現象の、原型になるイデアが存在する世界「イデア界」が、感覚の世界の後ろにあり、それこそが本当の世界であると考えたのです。

そういわれれば、私たちは、実際には目で見ることが出来ない、抽象的なものを、実際に存在するかのように言葉を使って共有しています。

簡単な例で言えば、あなたが「三角形とはどんなもの?」と聞かれれば、こういうものですと言って、紙に三本の線分をつなげて、三角形の図形を描きます。

                  幾何学授業


それを見ることで、相手もこれが三角形というものかと理解します。

しかし、紙に書いた三角形の図形は、実際には理想の概念である三角形ではありません。
概念としての「線」は太さを持たないのですから、紙に書かれた「線」自体がすでに線ではないのです。

紙に書かれたものは、理想の概念である三角形そのものではないし、そういう意味では、誰も概念である三角形を、視覚でとらえることは出来ないのです。

しかし、私たちは「三角形」という言葉を使えば、共通の理解を持つことも出来るし、幾何学の定理を、証明をしてみせることさえ出来るわけです。

プラトンは、このように現実を、曖昧で不完全な感覚でとらえている「感覚界」と、理性を働かせればとらえることが出来る、永遠で不変なものが存在する「イデア界」の二つに分けて考える訳です。

さらに、この考えを人間の存在にも当てはめて、私たちは、肉体に縛られた、感覚界に属する部分と、それとは別に、物質的ではない不死の魂が存在しているのだと考えます。
そして、理性は魂に住んでいて、イデア界をのぞくこともできると考えました。

また、この考えをさらに進めて、魂はかつて、イデア界に住んでいましたが、私たちの身体に降りてきて、人間の身体として目を覚ました時には、かつて住んでいた世界の完全なイデアは忘れてしまうのだといいます。

これは、分かりやすく例えてみると、私たちはかつて完全な理想の世界に住む、魂としての神様でしたが、人間の肉体を借りて、そこに住むようになると、神様であったことを忘れてしまいます。

イデアについては、不完全にしか覚えていませんが、たとえば馬という動物を見れば、それが馬であり、どのような性質のものかがわかる程度には、イデアを思い出せるのです。
そして、時として神様だった時のこと思いだし、魂の本当の住まい(イデア界)へのあこがれを思い起こすのです。

プラトンは、このあこがれを「エロス」と呼びます。

魂がもともとの源への愛のあこがれを感じるのが、エロスだというわけです。

                  片膝をつく天使

私たちが、普段見ている現実は、不完全なイデアなので、いわばイデアの影だけを見ているようなものだと、プラトンはいいます。

このことを、「洞窟の譬え」で説明しています。

私たちは、洞窟に縛り付けられていて、目の前の壁に映し出されている実物の影だけしか見えないのです。

じつは、その後ろには現実の存在があり、その背後には光源となる火が燃えているのです。

そんななかで、ある人が勇気を出して、後ろを振り返って見るのです。

そして、そこには、影などではない、リアルな本物の世界と、影を作り出していた光の世界があることを、発見してしまいます。

かれは、洞窟を抜けだして、外の世界に飛び出します。

今まで見ていたものは、全て偽物で、本物の世界の影でしかなかった。

本物の世界は、なんと素晴らしいものだ、というわけで、彼は、まだ洞窟の中に閉じこもっている仲間の所へ戻って、この発見を知らせ、本物の世界のすばらしさを説きます。

しかし、洞窟の中にいる人達は、目の前にある影こそが本物だと信じていますから、彼のたわごとには耳を貸しません。

新しい世界の発見者は、本当だから見に行こうと、主張しますが、結局、とんでもないことを言う危険な存在だ、といって彼らに殺されてしまうのです。

プラトンは、毒杯を仰いだ、彼の師であったソクラテスを思い描いていたのでしょう。

プラトンは、このほか国家論なども説いていますが、ここではイデアの世界の説明までということで、終わらせていただきます。

哲学史を振り返って見ることは、現在の私たちの常識が、実はどのような考え方から影響を受けていたのかを、再発見することが出来ます。

また、現在では主流でなくなった考え方に触れることは、現在の考え方の行き詰まりを解決するヒントになるかも知れません。

これが正しいと押しつけられた考え方から、自由に自分で考える力を、取り戻すことも出来るかも知れません。

たとえば、プラトンが言うように、本当に正しい事はイデア界にあって、私たちは影しか見ていないのであれば、どっちが正しいと議論することには、限界があるのだという認識も出てきます。

いろんな考えを、鵜呑みにせずに自分で考えてみれば、人が考えることの限界を知ることにもなります。

これは一種のパラドックスですが、

 つまらないことを考えたくなければ、出来るだけいろんな考え方を、自分で考えてみよう。



参考
ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙
ヨースタイン ゴルデル 日本放送出版協会 (1995/06)
※哲学者の年代はソフィーの世界の記述にしたがっています。



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ソクラテス

自然哲学者たちは、自然を探求し、現代の科学にも大きな影響を与えました。
その一方で、ギリシアの文化の中心は、民主主義の舞台アテナイ移ります。

民主主義に参加するためには、人々への教育が必要であり、アテナイ市民は、人を説得する技術、弁論術(レトリック)を身につけることが、重要になりました。

その需要もあって、ほうぼうのギリシャの植民地から哲学者や教師が、アテナイに押し寄せてきて、市民を教えることで生計を立てるようになります。

かれらは、ソフィストと呼ばれます。

ギリシアの遺跡


ソフィストは「懐疑主義」の立場を取ります。つまり、人間は、決して自然や宇宙の謎に確かな答えは見つけられないだろうという立場です。

いっぽうで、ソフィストは、自分が人間であることは知っているし、人間は共に生きていくことを学ぶべきだとして、社会の中での人間のありように、関心を向けることに集中したのです。

プロタゴラス(BC487?420)は、「人間はあらゆるものの尺度だ」といいきります。
善悪は、人間の必要に応じて決められるもの、また、神については、神がいるのかいないのか、確かなことは、自分にはわからないとする、「不可知論者」の立場を取ります。

ソフィストたちは、「正しさには、絶対的な基準はない」と主張します。

考える動物1


そんななかで、ソクラテス(BC470?399)が登場します。

ソクラテスは、謎の多い人で、ソクラテス自身は何も書き残さなかったので、その考えの多くは、プラトンなど弟子の著述の中に記載されたことに頼っています。

ソクラテスは、賢人と呼ばれている人達や通りすがりの若者に対して、相手の考えを向上させることが目的の対話(産婆術とも呼ばれる)を行っていました。

しかし、当時の賢人たちは「常識」に執着したため、この方法は「知っているといっていることを、実は知らないのだ」ということを暴くことにつながり、相手は恥をかかされたとしてソクラテスを憎むようになっていきます。

このため、ソクラテスは「若者を堕落させ、神々を認めない」などの罪で公開裁判にかけられることになります。
500人の陪審員は、多数決によって、ほんのわずかの差でソクラテスに有罪を言い渡します。

ソクラテスは、自分の良心と真理を命より大事と考え、判決にしたがって自ら毒杯を飲み干します。

ソクラテスの時代に存在した、ソフィストたちは、どうでもいいようなことを論ずることで、お金をもらっていました。
それは、自分も世界も誤魔化して、何でも知っているような知ったかぶりをするやり方でした。

ソクラテスは、それに対して、自分だけが「自分は何も知らない」ということを自覚していて、その自覚があるおかげで、他の無自覚な人々に比べて優れているのだと考えていました。

討論


ソクラテスは哲学を展開する方法として、対話を通じて相手の持つ考え方に、疑問を投げかける問答法を使用します。

その方法は、自分ではなく、相手自身が知識を作り出すことを助けるというやり方であったため、「産婆術」と呼ばれています。

この問答法は、相手の矛盾や行き詰まりを自覚させて、相手自身に真理を発見させるものであり、イロニー(アイロニー)の語源であるエイロネイアともいわれます。

また、書物に記述せずに、もっぱら対話を用いようとしたのは、書き留めた「死んだ会話」ではなく、対話を通してノンバーバルなものも含めたすべての要素で、相手に伝えようとしたのだといわれています。

かれは、知らないことを何でも知っているようなフリをする、ソフィストたちの道を取らず、また知らないことに目をつぶって誤魔化すこともしない道を選びました。

そして、いつの世でも、その時の常識に従わずに、それに疑問を投げかけるものは、社会から危険視されるというリスクをおいます。

ソクラテスが、危険を冒して、自らの命を賭けても守ろうとしたのは、自分の理性に、良心の声に従うことでした。

正しい認識は、正しい行為につながる。そして正しい事をする人だけが正しい人間だと考えたのです。

ソクラテスは、自分の信念にもとることをすれば、人は幸福になれない。
心の奥深くでは正しくないと思っていることを、繰り返すことは、本当の幸せにはつながらない。

社会にあわせて、自分自身に嘘をついていたのでは、いかに社会に受け入れられても、正しくない方法であり、幸福にはなれないのだと考える訳です。

あくまでも、物事の本質を追究する姿勢、これはソクラテスがはじめたものとされ、彼が哲学の代名詞のように呼ばれるのも、ここから来ているのかも知れません。

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ところで、ソクラテスの用いた問答法というのは、こういうものです。

彼は、自分が何も知らない馬鹿のフリをして、ソフィストに質問をします。
たとえば「正しい」とはどういうことでしょうか?

ソフィストが説明をします。そしてその説明の矛盾点を見抜いたうえで、
それなら、「○○とはどういうことです?」「××は?」と問い詰めて行くわけです。

知ってますか


最後は、「なあんだ、やっぱりわからないんですね」といって公衆の面前で、賢者に恥をかかせるのです。
ソフィストならずとも、このやり方は相手を怒らせるものです。
他に方法はなかったのでしょうかね。

この時代のギリシアのアテナイでは、民主主義の政治が行われています。
ただし、現代のように、全ての人間に平等に参政権があるわけではありませんでした。

そして、多数決により採決で決定することが民主主義たる方法でした。
ソクラテスの有罪判決もこれに従うものでした。

ところが、上述のように、この時代には、ソフィストたちによる相対主義の考え方が浸透していたのです。

つまり、何が絶対正しいのかなど、誰にも決められるものではないという考えです。
それなのに、多数決なのですから、どういうことが起きるでしょうか。

先に雄弁に発言した人間の意見に、みんながつられて賛同するという結果を招くことは、想像に難くないでしょう。
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参考
ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙
ヨースタイン ゴルデル 日本放送出版協会 (1995/06)
※哲学者の年代はソフィーの世界の記述にしたがっています。



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自然哲学者2

前回のパルメニデスの普遍の存在と、ヘラクレイトスの変化生成の考えは、よく対比されます。

パルメニデスは、
A.何も変化することは出来ない。
B.したがって感覚はあてにならない。

ヘラクレイトスは、
A.すべては変化する(万物は流転する)。
B.感覚はあてになる。

原子モデル


この対立に答えたのが、エンペドクレス(BC494?434)です。

エンペドクレスは、この不一致が生じた原因は、二人の哲学者が、元素はたった一つだと考えたことによって生じたのだと言います。

元素が1つしかなければ、理性が語ることと、感覚を信じることの間に溝を作るしかないのだといいます。

水は魚や蝶にはならない、水は水のままであるわけで、パルメニデスが何も変化しないと言ったのは正しい。

しかし、ヘラクレイトスが言うように、絶え間なく自然は変化しているのであって、それを見る感覚が語りかけることは、信じるべきであるとします。

それには、自然はたった一つの元素から出来ている、という考えを捨てるべきだと言います。

結局、エンペドクレスは、自然には四つの元素があると信じ、これを「根」と名付けます。
その四つの根とは、土、空気、火、水です。

自然のあらゆる変化は、この四つの元素が、混ざり合ったり、分離したりすることで生じるのだと言います。

そしてたとえば、動物が死んだとすると、四つの物質はバラバラになります。

四つの元素は、それ自体は変化しませんが、それらが様々な割合で混ざり合うことによって、また様々なものが、新しく作られていくのだと考えるのです。

木片を燃やすと、火の中で、何かがパチパチとはぜ、ジージー言う音も聞こえます。
この音は水によるものです。そして何かが煙になり、空気となる。
そして炎が消えた時に残るのは灰、すなわち土である。

エンペドクレスは、それに加えて、物質が結合したり、分離したりすることの原因についても語ります。

四種類の根を結合するのものを「愛着(ピリア)」、分離させるものを「憎しみ(ネイコス)」と名付けます。

つまりエンペドクレスは、物質(四元素)と力(愛と憎)を分けて考えたのです。

私たちの知覚についても、おもしろい考え方をします。

私たちの目の中の土の部分が、自然の土をとらえ、目の中の空気の部分が、外界の空気をとらえるのだというのです。
そして、これらの元素の欠けているものがあると、自然を全体としてもとらえることが出来ないといいます。

考える犬1


しかし、一つの元素とか、四元素から全てが作られるという点に納得しなかったのが、アナクサゴラス(BC500?428)です。

アナクサゴラスは、自然のものを小さなものに分解すると、目に見えないものになるが、この小さな要素の一つ一つにも、全ての要素の元になるものが含まれているはずだと考えたのです。

これは、現在の科学で、私たちの身体が、細胞から出来ていて、体細胞の一つ一つには、身体全体に関する、おびただしい情報が書き込まれている、という考えにも通じるものです。

アナクサゴラスは、最も小さな構成要素のことを、「種子(スペルマタ)」と呼びます。
エンペドクレスは物質の結びつきや分離について、愛と憎の力を考えました。

これに対して、アナクサゴラスは、バラバラに混ざり合っていた「種子(スペルマタ)」は「理性(ヌース)」の働きによって、次第に分別整理され、現在のような秩序ある世界ができあがったのだ考えました。


そして、最後の自然哲学者デモクリトス(BC460?370)が登場します。

デモクリトスは、すべてのものは、目に見えないほどの小さな単位から、成り立っていて、その一つ一つは、永遠に変わらないものと考えました。

そしてその一番小さな単位を、「原子(アトム)」と名付けます。

原子モデル2


アトムとは、それ以上「分割できない」という意味です。

原子はそれ以上は分けられず、永遠に存在する、だから、どんなものも原子から出来ているのであって、無から生じることはないのだというわけです。

そして、原子は、全てが同じ形ではないだろうと、予測します。

同じものから、全てのものが、かたち作られるというのは、うまく説明が付かないというのです。

自然界には、無限の原子が存在し、それぞれが様々な形をしているので、それらが組み合わさって、あらゆるものを形作ると考えました。

そして、原子はどんなものであれ、それ以上分けられないし、永遠の存在で、変化することもないのだという考え方です。

現在の物理学でも、原子が終わりではないにしても、それ以上分割できない限界が存在するという点では、同じように考えています。

デモクリトスは、現在のような測定機器なしに、思考だけで、この考え方に達したわけです。

また、デモクリトスは、原子のみが物質(マテリアル)として存在し、原子のないところは、ただの空間だと考えています。

そして、物質(マテリアル)以外の力や精神的なものを、一切排除して考えました。
このことから、かれは、「唯物論者(マテリアリスト)」と呼ばれます。

原子論では、原子が空っぽの空間を、運動することによって、様々な生成や消滅も説明できるとします。
なお空っぽの空間、虚空間(ケノン)という考えもここで登場します。

そして、また彼は、魂というのは、魂専用の「魂の原子」が集まって出来ていると考えます。
人間が死ぬと、魂の原子はバラバラになって、四方八方に飛び散り、新しく作られようとする魂の中に、飛び込んでいくと考えたのです。

考える若者


デモクリトス原子論によって、いったん自然哲学は区切りを迎えます。

しかし、デモクリトスは、全ては機械のように動いていき、エンペドクレスやアナクサゴラスのような、精神の力というのはまるで認めなかったのです。

原子論は、現代の科学としても充分に通じるものであり、そしてまた、否定された精神の働きについては、現代でも明確な答えは已然としてもたらされてはいないようです。

物質の根源が何かはともかくとして、自然哲学者たちは、自然の現象、営みの原理を突き止めたいと考えていました。

それに対して、現代の私たちは、人工の物に囲まれて、概念ばかり操作しているようにも思えます。

目の前の利益にとらわれたり、競争すること自体が目的になってしまっています。

哲学以前に、何が大事なものかを、もう一度考え直す時が来ているのかも知れません。

参考
ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙
ヨースタイン ゴルデル 日本放送出版協会 (1995/06)
※哲学者の年代はソフィーの世界の記述にしたがっています。




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自然哲学者1

いつもと趣向をかえて、哲学史を振り返ってみたいと思います。

哲学というのが、現在の私たちと無縁の世界ではなく、
私たちの今の常識を、作り出してきた元になっていることに、
きっと驚きや、新しい発見があると思います。

ギリシアの遺跡


今回は、最初のギリシャの哲学者たちについてです。

ソクラテス以前の、彼らのことは、自然哲学者と呼ばれたりします。
これは、彼らの関心の対象が、自然の営みにあったことによります。

ギリシャの人達は、全てのものが無から生まれたとは考えず、元になる「何か」がすでに存在していると考えていました。

全てのものの、おおもとになる、なにか「元素」が、存在するのだと考えていました。

そして、かれらが哲学者と呼ばれるのは、自然の出来事を、それまでの神様の仕業(神話)によるものではなく、自然そのものを観察することにより、その原理を解き明かそうとして、神話から自由になった点にあります。

最初に元素の考え方ということで、ミレトスの三哲学者、タレス(BC624?546)、アナクシマンドロス(BC610?547)、アナクシメネス(BC570?525)についてさらっと触れます。

タレスは、エジプトにいって、ピラミッドの高さを、影の長さから測定したと言われています。
また天文学にも通じており、日食を予測したと言われます。

タレスは、水がすべての根源(アルケー)だと考えました。

すべてのものは、水から生まれて、水に帰ると考えました。

アナクシマンドロスは、特定の元素からものが生まれるのではなく、何かから生まれて、何かへと消えていくと考えます。

彼は万物の根源(アルケー)は無際限無限定(アペイロン)であると考えています。

アペイロンは成熟することも衰退することもなく、目の前に存在する物質を、新しく永遠に生み出し続けていると考えました。
アナクシメネスは、万物の根源(アルケー)は空気(気息)であると考えました。

死人が呼吸しないことから、呼吸が生命を作りだし、同じように空気が全てのものを作り出すと考えます。

空気が薄くなると熱くなって火になり、濃くなると冷たくなって水になり、さらに濃くなると土や石になるという具合に考えたようです。

考える博士


次に、元素はともかくとして、どうして、あるものが他のものになるかという、変化のとらえ方に関して、二人の哲学者を取り上げます。

最初に、「エレア学派」のパルメニデス(BC540?480)です。

感覚で捉えると、見た目には物事は生成変化を続ける様に見えます。

しかし「変化」とは在るものが無いものになることであり、無いものが在るものになることです。
理性で考えれば「無」から「有」が生じたり、「有」が「無」になるのは矛盾している、だから変化などないのだと考えます。

このように、パルメニデスは感覚よりも理性を信じることにより、真に在るものは不変だと考えました。

変化するというのは、感覚が騙されているのだと考えます。

このような感覚より理性を信じる考えを「合理主義」と呼びますが、パルメニデスは合理主義の祖であると言われています。

ちなみに、パルメニデスの弟子のゼノンは、運動が存在しないことを示すために、有名な「アキレスの亀」のパラドックスを考えたと言われています。

ガンジス川

変化については、もう一人の哲学者、ヘラクレイトス(BC540?480)がいます。
ヘラクレイトスは「万物は流転している」と考えます。
自然界は絶えず変化していて、変化することが自然の性格だと考えます。

すべては、動きの中にあり、何一つ永遠に続くものはない、「同じ河に二度入ることはできない」のです。この意味は、私たちが、二度目に河に入った時には、私自身も流れもすでに変わっているのだからということです。

また、ヘラクレイトスは、世界は対立で成り立っている、病気にならなければ、健康が何かわからない、冬が来なければ、春の訪れもないというように。

善も悪も、全体の中に必要な居場所を持っていて、対立による闘争があるから、世界が変化を続けていられるという発想をします。

そしてまた、ヘラクレイトスは、理性(ロゴス)という言葉を使います。
世界の全ての現象をコントロールする、「世界の理性(ロゴス)」というものが存在していルはずだと考えます。

人間もこれに従うべきなのだが、たいていの人は自己流の理性(ロゴス)で生きている、そのようなものの見方は、ヘラクレイトスに言わせると「子どもの遊び」だということになります。

「万物は一である」、「一から万物が生まれる」として、「根源的な一と多くの表面的なもの」の関連を言い出した人だとも言われます。

考えるウサギ

「万物は流転する」「対立が変化を作り出す」「感覚はあてにならない」「ロゴス」「万物は一つ」といった考え方が生まれてきました。


しかし、まだ人間の自我や思考については、あまり考慮されなかったようです。
また、神様の仕業といった発想からは、いったん決別します。


今でこそ、私たちは、教育によって物質が原子から出来ていることを、当たり前のように信じています。

しかし、そのような前提がなかったら、ものがなにから出来上がっているか、という問題にどれだけの発想が及ぶでしょう。

また、万物を生み出す根源という考えは、今後も形を変えて、考え続けられることかも知れません。

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