あたりまえのことをあたりまえに!
しかし、これは起きてくることが平凡で退屈なのではなくて、実は「自分が変わりばえのない毎日にしているのでは?」ということはないでしょうか。
風、疎竹に来たるも、風過ぎて竹に声を留めず。
雁、寒潭(かんたん)を度るも、雁去りて潭(ふち)に影を留めず。
故に君子は、事来たりて心始めて現れ、事去りて心随いて空し。
風がまばらな竹藪に吹いていると、その時、竹の葉は風に吹かれて鳴るけれども、吹きすぎてしまえばもとの静けさにもどり、竹藪にはなんの音もしない。また、雁が冷たく澄んだ淵の上を渡っていくと、その時は雁の姿を水面に映すけれども、雁が飛び去ってしまえば、淵の上の雁の姿はまったく跡を留めていない。だから君子というものは、何か出来事が起こると、はじめてそれに対応する心があらわれ、それが過ぎてしまえば、それにしたがって心もまったく無になってしまう。
(菜根譚 講談社学術文庫・中村璋八、石川力山訳)

「事来たりて心始めて現れ、事去りて心随いて空し」
何かが起きて初めて対応を考えて動き、ことが治まれば忘れてしまう。
このあたりまえのことが、実は難しいものです。
私たちは過去に経験したことを今に生かそうとします。
昨日と同じ過ちを繰り返すのは、学習能力がないわけで困った人だと言われます。
確かにそれがバランスを保っている分には、過去を生かすことは有益です。
ですが、同じ働きがかえって私たちを生きにくくしたり、苦しめたりする原因にもなるのです。
たとえば、「何かが起きて初めて対応を考えて動く」というと、「そんなことではダメだ。あらかじめ予測して準備を怠ってはいけない。出来ることはすべてやっておきなさい」と考える人もいるでしょう。
あるいは、過去の経験を生かす事は、私たちが効率よく動くための助けになります。
昨日までのやり方を継続していけば、毎回考えなくても今やることはわかってきます。
やり方を決めたら、それはもうルーチンワークにしてしまって、あたらしい事を考えるのにエネルギーを使おう。
これぞ出来る人の心得だと考える人もいるでしょう。
しかしこのルーチンワーク化こそが、私たちを退屈にさせていて、それから逃れたくて何か新しいワクワクすることが起きないだろうかと思わせるのです。
実は現実に起きてくることは、そんなに変化がないわけではなく、ルーチンワーク化された私たちの見方が、「いまここ」で起きている変化を捉えられなくしてしまうのではないでしょうか。
その結果、私たちは今起きていることを楽しむには、日常を離れて旅行をするなど何かイベントを作らないと変化を楽しめないと思い込むようになります。
目を向ける気になりさえすれば、毎日なんども「風は疎竹に来ている」のです。
昨日の継続が今起きていることを見る機会を奪ってしまうから、毎日同じことしか起きないのも当たり前なのです。
肝心なのはバランスです。
変化のなさにうんざりしているなら、「少しルールを破ってしまおう」というくらいの変革が必要です。
「これは今日のうちにやらなければ」と思って決定事項にしていたことを少し優先順位を下げてみましょう。
そのかわりに、今目の前で新しく起きていることはないのか見わたしてみましょう。
いま風が吹いているのかどうか調べて見ましょう。
飛んでくる雁はいませんか?
毎日予定を20個こなしているのなら、10個だけにして、その時間で今を感じ、まわりを見わたし、自分の気分を聴いてみましょう。
今日は1個しかやらないと決めてもいいのです。
大勢に影響などありません。
あると思わせるのは、自分の中の恐れだけです。
そもそも、予定など多少の効率化をもたらすはかりごとに過ぎないのです。
予定なしに目の前のことをこなしていても大差はありません。
予定に縛られて動きが鈍らない分効率的かもしれません。
それに、いま急に起きて来たことにも柔軟に対処が出来ます。
「予定通りに進んでいる」と安心したり、満足している自分は、ちっとも安全などではありません。
それどころか、そのことが「予定が狂うことを怖がる」自分を作りだしているのです。
また、それが予定通りに出来なかった自分を責める自分を強化しているのです。
まわりは「予定どおりですか?」と声をかけてきますが、気にしないで「いまここ」をもっと楽しむことです。
そうしないと、いつになってもあなたが望んでいる「いつかくる安らぎの時」はやってきません。
毎日が退屈で窮屈だと感じ始めたら、作られた娯楽を求めずに、「いまここ」にいる自分を自由にさせてみることです。
誰かが作った楽しみを探したりしないことです。
作られた楽しみこそが、あなたを退屈にさせているのです。
準備しないと何も起こらないという思い込みをやめてみましょう。
いま目の前で起きていることをちょっと感じてみましょう。
そして楽しみが終わったら忘れることです。
「事去りて心随いて空し」
この楽しみを明日にも残しておこうと思ったとき、また新しいガラクタを作り出しているのです。
持っている物を捨てられなくてガラクタだらけになるのは、この「楽しみを明日にも残しておこう」という思いが原因なのです。
ガラクタに囲まれていると、だんだんあなたに鬱が忍び寄ってきます。
「捨てられないし、かといって変化もしない」ものが、あなたを真綿で締めるように憂鬱に追い込んでいくのです。
予定があるのも良し、予定がないのもまた良し。
突然の来客も良し、突然の別れもまた良しなのです。
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テーマ : メンタルヘルス・心理学
ジャンル : 心と身体


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